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リーダーたちの未来図

金融教育が日本経済の未来をつくる

諸橋金融教育に関する部分に関しては、世代を越えても必要ですよね。

中島氏CSRについては、現在、金融機関として中長期的に取り組むべき重点課題として、三本柱でやっています。「環境」「次世代」「コミュニティ」です。中でも、次世代に対して金融機関は何ができるのか?と考えた時に、金融経済教育じゃないのかということになったわけですね。 日本というのは、アメリカやヨーロッパに比べて、金融リテラシー(注:金融を正しく理解し、自ら判断できる能力)が低いと言われています。日本人は、お金について話すのは卑しい、みたいな感覚を持っていますよね?

諸橋昔からですけど、例えば、サングラスをかけると不良とか(笑) お金に関しても「お金=汚い」という意識が強く、お金の話をするのがはばかれますよね。でも、本当は違いますよね。お金をどうやって増やすか、健全管理するかっていうことは大切ですよね。

中島氏おっしゃる通りです。お金のことをもっと真剣に考えて、お金を上手く使う、上手く活用することが、今後の日本にとって、とても重要になってくると思うんですね。 現在、日本では人口減少が始まっています。個人の金融資産が1800兆円と言われていますけど、これもどこかで頭打ちになるわけです。まずは、この1800兆円という個人の金融資産をどうやって運用して残していくか、できれば増やしていくかということです。日本の金融資産の多くは、60歳以上の方々が保有しおられるわけですが、その方々の多くは若い頃に金融教育を受けられる環境が整っていなかったため、金融知識が十分でない。そんな中で、株を買ったり、投資をしたりしておられるわけですが、これが本当に正しい投資になっているかというと、必ずしもそうでないケースもあるわけです。 反対に若い世代、これから資産を形成していこうとしている人たちは、自分のキャッシュフローをどのようにコントロールするかというのが大事なわけですが、この人たちについても、日本においてはあまり教育がされてない状況です。正しくお金を使う、活用する、運用する、といったことができるようにしないと、日本は思っているよりも早いタイミングで衰退しかねないと思います。

諸橋払いきれるのかきれないのかという計画も含めた部分というのは、まだまだ知識として十分でないのかもしれないですね。
以前、御社がサポートされている品川ファイナンス・パークに行ったことがあります。その時に、金融資産について教えておられるのを見て「これ最初から授業に入れてくれていればよかったのに!」っていうのを思いましたね。

中島氏小学校や中学校で、そんな授業はなかったですよね?

諸橋なかったです!

中島氏これ、世界では珍しいんですよね。他の国はある程度学校で教えてくれるんですよね。

諸橋確かに、日本以外では学校で教えてくれますよね。私は、実家が商売やってたんで、「お金は回せ」と教えられましたけど。



中島氏金融に慣れる、お金に慣れるということを小学校や中学校で学べるといいですよね。お金に慣れるっていうのは、ビジネスに慣れるっていうのに近い感覚だと思うんですね。 家でご商売をやっておられた諸橋さんのような方もいらっしゃいますが、大半は公務員とかサラリーマンの家庭じゃないですか。そうすると子供は、商売を知らない、お金を知らないまま育ちます。当行はキッザニアに出店していますけれど、遊びと学びを融合させたような場を設けるのは「お金に慣れる」「ビジネスに慣れる」という意味ですごく良いと思います。シビアなことは高校・大学で学べば良いと思うんです。

諸橋私もスポーツの活動をUSFで6年間やってきて、色んな年代を対象にしていますが、きっかけって重要ですよね。興味を持つか、持たないかって、絶対、最初の出会いだと思うんです。それって、多分、プレゴールデンエイジと言われる低学年のときに、なんとなくでも面白いって思うか、思わないかって、すごく大きいと思っています。「面白い!!今度見てみる!」「今度、お父さんに聞いてみる。」というきっかけになる。金融も多分一緒なのではないかと。 あと、次世代はもちろんですが、私が個人的に思うのは、ぜひ、スポーツマネジメント団体に、それを教育していただけないかと。

中島氏そういう話をよく聞くんですけど、そうなんですか?

諸橋そうなんですよ。お金の回し方がわからないというか、だから、本当に宝の持ち腐れというんでしょうか。素晴らしいアスリートがいて、素晴らしい試合をやっているのに、過去20年、30年で、アメリカと日本のスポーツマーケットは格段に差がついてしまったんですよね。アスリート自身や、アスリートをマネジメントするだけじゃなく、ちゃんとお金を動かすやり方が、日本は完全に欠落しています。

中島氏我々金融の世界から見ると、東京2020オリンピック・パラリンピックや、2019年のラグビーワールドカップは、それぞれが一つのプロジェクトなんですね。先行投資をして、リターンが後でくる。金融プロジェクトとして一番典型的なのは、発電所を海外で造るというようなプロジェクトです。プロジェクトにお金を貸して、そのプロジェクトが将来生む収益で返済していただくということをやります。 金融機関から見ると、スポーツイベントはプロジェクトファイナンスの対象なんです。始める前の段階で、チケット収入や放映権がいくら入るとか、そういうことをしっかり見積もった上で、投資するお金とリターンが見合っているかを考えます。当然、色々と想定外のことが起きて、うまくいかないこともあるので、そのリスクをどういう形で手当てするのか、ということも考えます。保険でカバーできるリスクもあるでしょうし、保険でカバーできないとしたら、こういう事態が起きた時には、残念だけど、やろうと思っていた何かを止めようとか、そういうことも含めて、ちゃんとした全体の計画を作っていくことが大切だと思います。

諸橋スポーツや医療という健康に関わる部分は、これからのまちづくりにも欠かせないと思うんです。それによって、コミュニティが活性化されたりもすると考えています。けれどそれも、お金を動かすエキスパートがどこにもいない。ぜひ、市場発展のために、本当に銀行さんに入っていただきたいですね。 東京2020オリンピック・パラリンピックが開催される2020年以降の日本について、どのように見ておられますか?

中島氏2020年を目指してやっていると試練が来ますよね。

諸橋現実問題ですね!

中島氏2020年で終わりにしてしまってはダメなんですよね。2020年へ向けた取組みを、その後の持続的な発展に繋げていく必要があります。 2020年に向けて、国内は今すごく盛り上がって来ていますが、やっぱり、2030年、2040年、日本をどうして行くんだっていう大きな流れの中で2020年をどうするかという視点が必須だと思います。長期的な目線をもって臨まないと、失速してしまうリスクがあると思いますね。いろんな意味で、経済もそうですし、国を挙げて目指すものが無くなった時に、この社会はどうなって行くんだろうと考えると、たまにゾッとします。そうならないためにも、本当に色々なことを前倒しでやっていって、日本という国を変えて行く必要性を強く感じますね。

諸橋そのためにも次世代を担う子供たちの金融教育も含めて、これからも、社会全体を金融面から支えていただきたいですね。 今日は、本当にありがとうございました。

株式会社三井住友銀行 常務執行役員 経営企画部副担当役員 兼
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
常務執行役員 企画部長
中島 達

1963年生まれ、名古屋市出身
1986年3月 東京大学工学部を卒業(学生時代は運動会ラグビー部所属)、同年4月 住友銀行入行、1989年より1991年まで米国ダートマス大学ビジネススクールに2年間留学。
1991年に帰国し、企画部に所属、2000年には住友銀行とさくら銀行の合併プロジェクトに従事。2006年4月三井住友銀行 経営企画部副部長、2008年4月香港支店副支店長、2011年4月新横浜法人営業部長、2013年4月個人統括部長、2014年4月執行役員リテール統括部長、2015年執行役員経営企画部長、2016年常務執行役員経営企画部長、現在は三井住友フィナンシャルグループ常務執行役員企画部長としてCSR室、オリンピック・パラリンピック室も所管する。