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リーダーたちの未来図

スポーツの力で元気な社会をつくりたい

株式会社アシックス 代表取締役社長CEO 尾山 基 USF 代表理事 諸橋 寛子

株式会社アシックス
代表取締役社長CEO
尾山 基
USF 代表理事諸橋 寛子

「スポーツ・健康・快適ライフを創造する世界ナンバーワン企業」を目指し、世界のスポーツ産業を牽引し続けているアシックス。社名の由来である「健全な身体に健全な精神があれかし」という言葉は、創業65年を迎える今も変わらずに受け継がれている企業スピリットでもある。スポーツを通じて青少年の育成をサポートする企業としての取り組みや、スポーツ産業のリーダーが描くオリンピック、その先の未来についてお話を伺った。

脳の発達には運動が大切

諸橋寛子当財団の設立よりご支援をいただきありがとうございます。本日は世界のスポーツ産業をリードする御社にグローバルな視点から見たスポーツ振興の課題や展望についてさまざまなお話をお伺いしたいと思ってまいりました。

尾山基氏弊社はスポーツによる青少年の育成を通じて社会の発展に貢献したいという思いから始まった企業ですから、今日はスポーツ振興に取り組む同志としてお話させていただけることを楽しみにしています。USFは今年で創設3年目を迎えられましたね。

諸橋はい。初年度は被災地支援を中心に、現在は徐々に全国にその活動を広げながら子どもたちに向けてスポーツ振興活動を行っています。

株式会社アシックス
代表取締役社長CEO 尾山 基氏

尾山氏被災地に限らず、子どもたちのスポーツ離れは全国的に深刻ですからね。弊社の子ども向けシューズブランド「スクスク」を立ち上げて10年以上が経ちますが、その間のデータを見ただけでも、子どもたちの体に肥満や姿勢の悪さなど運動不足が原因と思われるさまざまな変化が起こっていることがわかります。

諸橋アメリカでも同様に子どもたちの運動不足や肥満が問題になっていますね。私の友人でもあるキャサリン・タリー氏は、そうした状況を改善しようと運動の苦手な子どもでも楽しみながら体を動かせる「BOKS(ボックス)プログラム」を開発しました。ハーバード大学のジョン・レイティ博士が提唱する「子供の脳を鍛えるいちばん効果的な方法は、体を動かすことである」という研究に基づいて考案されたこのプログラムは、すでに約500校で実施され、健康な体づくりはもちろん、集中力やコミュニケーション能力の向上にも効果あることが報告されています。USFは日本でこのプログラムの普及をお手伝いしているんですよ。

尾山氏そうでしたか。確かアメリカではナイキやニューバランスの財団でもこうしたプロジェクトを推進していますよね。弊社もまさに同じコンセプトで「キッズスポーツチャレンジ」プログラムを実施しています。レイティ博士と同様に子どもの脳の発達の研究で世界的に知られる故グレン・ドーマン博士も30年ほど前から「運動は脳の発達を促進する」と説き、幼児期の運動の大切さを訴えてきました。当社が「スクスク」や「キッズスポーツチャレンジ」を立ち上げたのも、スポーツを通じて子どもたちの体、脳、心の健全な発育を応援したいということが原点なんですよ。

諸橋世界中のリーディング企業が積極的に啓発活動に取り組んでいらっしゃるのは心強いですね。御社の「キッズスポーツチャレンジ」はどのようなプログラムですか?

尾山氏10メートル走やテニスボール投げ、バランス歩きなどゲーム感覚でタイムや距離を測定するイベントです。当社が培ってきた技術をいかして子どもたちの運動能力を把握・分析することで、自分の得意な運動分野を見つけて運動の得意な子も不得意な子もよりスポーツを楽しめるようにするのが目的です。基本的には商業施設や幼稚園、保育所などを対象とした有料プログラムで、これからもっと普及していくためには、例えばキッザニアのように子どもたちが夢中になって体を動かせるようなものにしていかなくてはと考えているところなんです。

諸橋まずは子どもたちが楽しい!と感じることが大切ですよね。USFもプログラムの中に遊びの要素をたくさん詰め込んで、運動アレルギーの子どもたちが「スポーツ」ではなく「遊び」として参加できるように工夫しています。

尾山氏それはいいですね。例えばどんなことをしているのですか?

諸橋今、順天堂大学陸上部のコーチや学生たちと「子どもがハマるかけっこプログラム」というオリジナルプログラムを実験的に行っています。単に走り方を教えるだけではなく、例えば「ボルトと同じくらいの速さで走る動物はなーんだ?」といったクイズをしたり、速く走るために足の回転の理屈をゲーム方式で教えたりして、かけっこが嫌いな子が知らないうちに走っちゃう方法を見つけ出そうとしています。私自身が運動嫌いだったので、そういった子どもたちがこのプログラムならやりたい!というものがつくりたくて(笑)。

尾山氏おもしろいなぁ、子たちの興味や関心をいかにひくかですね。弊社のプログラムも子どもたちが楽しんで夢中にやっているうちに気づいたら、もっと早く走れたとかもっと遠くにボールが投げられたとか、そういう風にしていきたいのだけど、そこがまだ下手なんですよ(笑)。

諸橋記録が伸びなくても、ただ投げることが楽しかったというだけでもいいと思うんです。面白い!楽しい!という動機付けが第一歩ですから。私はこれからスポーツ人口を増やしていくためにはエンターテインメントとスポーツが一緒にならないとダメなんじゃないかと考えているんです。

尾山氏なるほど。さっき話していたようなキッザニアのようなエンターテインメント性をプラスしたスポーツイベントができたら面白いかもしれませんね。

諸橋先日、あるイベントでサッカーがとても上手な子がいたので声をかけると「僕はゲームでしかしたことない」と言うので驚いたんです。いつもシュミレーションしているから自分がどんな動きをすればいいのかちゃんと頭にはいってるんですね。その場にいたコーチも一緒になって褒めると「じゃあ大きくなったらやろうかなと」言うんですよ。大きくなったらじゃなくて今すぐバーチャルとリアルで両方で楽しんだら?って話をしたんですけどね。これだ!と閃きました。スポーツ教室以外でもスポーツ人口は増やせると。

尾山氏ゲームでシュミレーションですか。今の話で思い出したのですが、子どもたちがインターネットやSNSなどに費やす時間が年々増加傾向にある中で、単純計算で睡眠や食事、学校、移動などの時間を引くと圧倒的にスポーツする時間がないという問題があります。スポーツ離れを食い止めるためには、私たちはこうした環境の変化についても真剣に考えていかなくてはいけないですね。

諸橋そうですね。これからはSNSやネットの世界とスポーツをくっつけていくしかないんじゃないかなと思うんですよ。何かするために走らないとダメだとか(笑)。

尾山氏たしかに、そういったこともウェアラブルになると可能になるでしょうね(笑)。